プロ棋士編入試験に合格した今泉健司アマのプロ入りまでの足跡

戦後最年長となる41歳でのプロ入りを目指していたアマチュア将棋の強豪、今泉健司さん(朝日アマ名人)が12月8日、プロ編入試験五番勝負第4局で石井健太郎四段に勝ち、3勝1敗としてプロ入りを決めました。今泉健司アマは、2015年4月1日付でプロ四段となります。

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プロ編入試験に合格した今泉健司アマのプロ入りまでの足跡

今泉健司アマがプロ棋士になるまでには苦難の連続でした。今泉健司アマがプロ棋士になるまでの足跡を追います。

最初の奨励会退会

今泉健司アマは、小林健二九段門下で1987年9月に14歳で関西奨励会に入会し、20歳となった1994年4月から奨励会三段リーグに参加しました。奨励会三段リーグでの成績は以下の通りです。

・1994年前期(27位)  5勝13敗 順位:28/29
・1994年後期(24位)  9勝 9敗 順位:15/26
・1995年前期(13位)  9勝 9敗 順位:14/26
・1995年後期(11位) 12勝 6敗 順位: 3/26
・1996年前期( 1位)  9勝 9敗 順位:12/23
・1996年後期(10位) 10勝 8敗 順位: 7/26
・1997年前期( 5位) 11勝 7敗 順位: 4/25
・1997年後期( 2位)  6勝12敗 順位:23/25
・1998年前期(19位) 12勝 6敗 順位: 3/24
・1998年後期( 1位)  9勝 9敗 順位:13/29
・1999年前期(11位)  9勝 9敗 順位:28/29

奨励会三段リーグでは2位以上になるとプロとなる四段に昇段することができます。今泉健司アマは三段リーグでの通算成績が11期で101勝97敗、勝率.510で勝ち越しはしましたが、最高順位が3位で、2位以上になることができませんでした。

今泉健司アマは1995年後期と1998年前期に2度次点となる3位になっています。現在の規定では次点(3位)2回でフリークラスに編入(*)できるという規定がありますが、この規定ができたのは1996年後期のため、1度目の次点はカウントされず、今泉健司アマにフリークラス入りの権利は与えられませんでした。

三段リーグには年齢制限の規定があり、満26歳の誕生日を迎える三段リーグ終了までに四段に昇段できなかった者は退会となります。今泉健司アマは1999年前期の三段リーグ中に26歳となったため、1999年9月で奨励会の退会を余儀なくされました。

奨励会退会後はアマチュアとして活躍しました。2003年の第16期竜王戦ランキング戦6組ではアマチュアとして参加し、藤倉勇樹四段、安西勝一六段、佐藤義則八段の3人のプロ棋士を破ってベスト8に進出するという快挙を果たしました。

(*)フリークラスに編入されると、プロとなる四段に昇段することはできますが、順位戦に参加することができません。奨励会三段リーグで2位以上になると、プロとなる四段に昇段するともに、翌年度には順位戦のC級2組に参加することができます。

奨励会三段リーグ編入試験

瀬川晶司五段がプロ編入試験で合格したことがきっかけとなり、奨励会三段リーグ編入試験(三段編入試験)が2007年度に創設されました。

三段編入試験の受験資格は、過去1年で6つのアマチュア全国大会(アマ竜王戦、アマ名人戦、アマ王将戦、支部名人戦、赤旗アマ名人戦、朝日アマ名人戦)のいずれかに優勝し、プロ棋士からの推薦を受けることが必要です。

三段編入試験では、原則奨励会二段(場合により初段も含む)と最大8局対局して6勝すると三段に編入されます。(3敗で不合格となります。)

今泉健司アマは2006年にアマ竜王とアマ王将で優勝し、秋山太郎アマとともに三段編入試験を受験しました。今泉健司アマの三段編入試験の成績は以下の通りです。

・第1局 2007年 2月 3日 ○ 吉田正和二段(平手)
・第2局 2007年 2月 3日 ○ 森下裕也二段(平手)
・第3局 2007年 2月24日 ○ 澤田真吾初段(香落ち)
・第4局 2007年 2月24日 ○ 斎藤慎太郎初段(平手)
・第5局 2007年 3月 3日 ● 菅井竜也初段(平手)
・第6局 2007年 3月 3日 ○ 藤田一樹初段(香落ち)
・第7局 2007年 3月28日 ○ 都成竜馬二段(平手)

8局対局して6勝しなければいけないという極めて厳しい条件でしたが、今泉健司アマは通算6勝1敗として三段編入試験に合格しました。

以下が三段編入試験のこれまでの結果ですが、三段編入試験に合格したのは今泉健司アマのみです。

・2007年 今泉健司 6勝1敗 合 アマ竜王・アマ王将(元奨励会三段)
・2007年 秋山太郎 5勝3敗 不 赤旗名人(元奨励会三段)
・2008年 武田俊平 0勝3敗 不 赤旗名人
・2009年 下平雅之 4勝3敗 不 赤旗名人
・2010年 秋山太郎 1勝3敗 不 アマ竜王(元奨励会三段)
・2010年 加來博洋 4勝3敗 不 赤旗名人(元奨励会三段・新人王戦準優勝)
・2011年 稲葉 聡 4勝3敗 不 アマ竜王(元奨励会3級)

2度目の奨励会退会

三段編入試験に合格した今泉健司アマは、今度は桐谷広人七段門下として、2007年4月から再び奨励会三段リーグに参加しました。奨励会三段リーグでの成績は以下の通りです。

・2007年前期(33位) 11勝 7敗 順位: 9/33
・2007年後期( 7位)  6勝12敗 順位:29/34
・2008年前期(26位) 11勝 7敗 順位: 9/34
・2008年後期( 6位)  5勝13敗 順位:33/35

三段編入試験に合格して三段リーグに参加した場合には、最長で4期しか在籍することができないという規定があります。また、在籍中に二段に降段した場合には即退会となります。

今泉健司アマは三段リーグの4期の間に2位以上になることができず、2度目の奨励会退会となってしまいました。通算成績は4期で33勝39敗、勝率.458で今回は勝ち越すことができませんでした。

なお、今泉健司アマはこの奨励会在籍中に、2手目△3二飛戦法を編み出し、将棋大賞の升田幸三賞を受賞しました。奨励会員が升田幸三賞を受賞したのは史上初でした。

プロ編入試験の受験資格獲得へ

今泉健司アマは2度目の奨励会退会後も以前と同様にアマチュアとして活躍しましたが、プロ入りを諦めませんでした。三段編入試験ではなく、プロ編入試験への挑戦が始まりました。

プロ編入試験の受験資格は三段編入試験の受験資格よりもさらに厳しく、プロ公式戦において、良い所取りで10勝以上、なおかつ6割5分以上の成績を収めたアマチュアまたは女流棋士で、プロ棋士からの推薦を受けることが必要です。また、受験料として税別50万円が必要です。

今泉健司アマは2012年からプロ公式戦でプロ棋士からの勝利が増え、2013年には第26期竜王戦ランキング戦6組で、八代弥四段、東和男七段、藤森哲也八段の3人のプロ棋士を破ってベスト8に進出するという2003年以来2度目の快挙を果たしました。

今泉健司アマは2014年7月5日に星野良生四段に勝ち、良い所取りで10勝4敗、勝率.714としてプロ編入試験の受験資格を得ました。この間の勝敗表は以下の通りです。

・2012年 7月 7日 ○ 牧野光則四段 朝日杯一次予選1回戦
・2012年 7月28日 ○ 桐山清澄九段 朝日杯一次予選2回戦
・2012年 8月30日 ○ 中座真七段   銀河戦Hブロック1回戦
・2012年 8月30日 ○ 吉田正和四段 銀河戦Hブロック2回戦
・2012年 8月31日 ● 大石直嗣四段 朝日杯一次予選3回戦
・2012年10月23日 ● 牧野光則四段 銀河戦Hブロック3回戦
・2012年12月 6日 ○ 八代弥四段   竜王戦6組ランキング戦1回戦
・2013年 1月18日 ○ 東和男七段   竜王戦6組ランキング戦2回戦
・2013年 3月15日 ○ 藤森哲也四段 竜王戦6組ランキング戦3回戦
・2013年 4月30日 ● 門倉啓太四段 竜王戦6組ランキング戦4回戦
・2013年 9月12日 ○ 竹内雄悟四段 銀河戦Eブロック1回戦
・2013年 9月12日 ○ 伊奈祐介六段 銀河戦Eブロック2回戦
・2013年10月31日 ● 髙見泰地四段 銀河戦Eブロック3回戦
・2014年 7月 5日 ○ 星野良生四段 朝日杯一次予選1回戦

プロ編入試験

プロ編入試験では、棋士との5番勝負をして3勝すると合格となり、フリークラスではありますがプロ四段になることができます。5番勝負をする棋士は、四段5名が棋士番号の若い順に選出されます。

今泉健司アマは再び桐谷広人七段門下として、プロ編入試験に挑みました。2勝1敗で迎えた第4局で石井健太郎四段に勝ち、3勝1敗としてプロ編入試験の合格を決めました。

・第1局 2014年 9月23日 ○ 宮本広志四段
・第2局 2014年10月 5日 ○ 星野良生四段
・第3局 2014年11月18日 ● 三枚堂達也四段
・第4局 2014年12月 8日 ○ 石井健太郎四段

41歳でのプロ入りは史上最年長になります。今泉健司アマと同級生となる1973年度生まれの棋士は以下の通りです。

・三浦弘行九段 1992年四段
・行方尚史八段 1993年四段
・野月浩貴七段 1996年四段
・木村一基八段 1997年四段
・金沢孝史五段 1999年四段
・今泉健司四段 2015年四段

今泉健司アマは2015年4月1日付でプロ四段となりますが、順位戦に参加することはできず、フリークラスに編入されます。フリークラスに編入された場合は、編入後10年以内、または満60歳の誕生日を迎えた年度が終了するまでに順位戦C級2組に昇級しないと、引退となってしまいます。

フリークラスからC級2組への昇級規定は以下のうち一つを満たした場合です。
(以下の昇級規定は日本将棋連盟のホームページからの引用です。[引用先]

1.年間対局の成績で、「参加棋戦数+8」勝以上の成績を挙げ、なおかつ勝率6割以上
2.良い所取りで、30局以上の勝率が6割5分以上
3.年間対局数が「(参加棋戦+1)×3」局以上。ただし、同じ棋戦で同一年度に2度(当期と次期)対局のある場合も1棋戦として数える
4.全棋士参加棋戦優勝、タイトル戦(朝日オープン将棋選手権含む)挑戦

フリークラスからC級2組へ昇級した例は以下の通りで、いずれも上記の条件2を満たしての昇級です。

・2001年 5月 7日 伊奈祐介 三段リーグ次点2回で編入後昇級
・2001年 5月29日 伊藤博文 C級2組から降級後復帰
・2009年 5月15日 瀬川晶司 プロ編入試験に合格後昇級
・2011年 1月19日 吉田正和 三段リーグ次点2回で編入後昇級
・2011年 7月25日 伊藤真吾 三段リーグ次点2回で編入後昇級

今泉健司アマは、今後は10年以内に順位戦C級2組への昇級を目指すことになります。

(追記 2015.4.15)
2015年4月1日付けで今泉健司さんは四段のプロ棋士となりました。関西本部所属です。

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